ホイットコム作品展を終えて
ホイットコム作品展に多数応募いただき、まことにありがとうございました。前回の酒井5t機作品展に引き続き、審査委員長を仰せつかりましたので、大変失礼ながら今回の講評をさせて頂きます。
今回は14両と前回よりも応募数は減りましたが、前回に増して素晴らしいものばかりで、甲乙付けがたいというのが偽らざる感想でした。その中で賞を決めるというのは、はなはだ僭越なのですが、以下の結果となりました。
まずは、受賞された皆様おめでとうございます。
酒井5t機に較べると、なじみが少なく残されている写真なども僅かな中で、いかにイマジネーションを膨らませているか、組み立て、塗装の仕上げ、全体の雰囲気などを考慮いたしました結果です。
特選の長井賢二さんの作品「ホイットコム木炭ガス機関車」は、高知の淺川式代燃装置付き機関車に触発されて製作されたということで、代燃装置を後部に搭載しボンネット脇に冷却器を抱えたという、ものものしいいでたちです。
代燃装置の配管類や補器類、ガス発生炉の周囲に遮熱のカバーを巻くといった、実物をよく研究して作りこんだディテールに加え塗装も渋く仕上がっていて、特に発生炉遮熱カバーに開けられた小窓からバルブハンドルが覗いており、さらにそれが赤く塗られていて、チャームポイントになっているなど、まさに特選にふさわしい作品でした。
優秀賞の柴草敏明さんの作品「武蔵野軽便鉄道2号機」は、近年まで活躍していればこんな感じに空制付き改造されていただろう、とも想像させるような屋根にエアーブレーキ用エアータンクが2本載ったものです。
ボンネットは酒井5t機のボンネットを切り詰め、正面のプロテクターはC4酒井のルーバーを改造して用いるなど、各製品のパーツをうまく用いて現役バリバリ風のホイットコムを表現してあります。自作のディカールによる鉄道名なども効いています。
準優秀賞の加藤誠さんの作品名称「木曽のジャック05」とはいったいなんなのでしょう?
応募作品の中ではもっとも非現実的なモディファイがなされていて、屋根上の荷物台や後方の折りたたみ式荷物受け、回転窓が付いているなど、さながら雪原を走るラリーカーのようないでたちですが、唯一エンジン部を作りこんで、ケーシングを取り外し可能に仕上げてあります。遊び心と工作力や仕上げの素晴らしさで推薦されました。
審査員賞の小島正道さんの作品「中標津のホイットコム後部開放キャブ仕様」は、モーターをボンネット内に横置きに納めて、キャブインテリアに挑戦したものです。
私が募集案内にヒントとしてこういう改造もありと呼びかけたものですが、応募作品の中では唯一のキャブインテリア付きの作品で後ろ開放キャブからの人形運転士がアクセントになっています。外観的に大きな改造はありませんが、全体の工作力の確かさや塗装の仕上がり、雰囲気等、地味ながら充分な存在感が評価されました。
以上が入賞作品に関するコメントですが、選外になった作品の中では、眞崎弘海さんの「紀ノ川のホイットコム」が目を引きました。
中標津のホイットコムの台枠だけを使用して動力や上回りは全自作という力作で、実物を見たことのある私が見ても、実物よりも実物らしいという雰囲気で塗装や仕上げも素晴らしいものでしたが、旧作ということと既にあちらこちらで発表、展示されていて目撃された方も多いはず。今回の作品展においては、いささか新鮮味に欠けるといった点から残念ながら選外とさせて頂きました。
伊藤昌彦さんは唯一人2両のホイットコムを出品されていました。木曽の実物に近い塗装仕上げで「崩沢の7号機」の方はモーターを横置きにして、キャブ開放部分でめだたないような改造がしてあります。色あいや全体の雰囲気は大変よいので、後は組み立てや塗装仕上げが課題点でしょう。
熊田圭吾さんの「着せ替えホイットコム」は、3種類のキャブを磁石で吸着できるようにして異なった3形態が楽しめるようにしたというアイデア作品です。それぞれのキャブがパチンと台枠に嵌るギミック的なおもしろさがあります。
管晴彦さんの作品は、組み立てや塗装などに素晴らしいものがあり、唯一動力装置を幅狭に改造して6,5mmゲージに改軌してある作品でした。
作品展の場合ともすると外観の派手な改造や、形態の方に目がいって、それらが高評価になるというのは否めませんが、小島さんの作品のような例もあります。皆さんの作品をご覧になって、今後の参考にし、また素晴らしい作品製作のモチベーションとして頂ければ幸いです。
西 裕之 記