キット組立講座


木曽の酒井製モーターカーW

実物同様「木曽の酒井製モーターカーV」と下まわりは共通ながら、全く違うボディーを乗せることにより、別の魅力的を発しているNo.14。ワークカーとしての役割とともに作業員輸送にも活躍するこのモーターカーの組み立てを、WEB上でお楽しみください。


第1回
1.最初にキャブ側板・後妻板・ドアー・プロテクターをランナーから注意深く切り離し、ドアーを側板にプロテクターを後妻板の窓部分に半田付けします。ドアーは小さな穴を合わせるようにします。次に前面に側板を半田付けして、コの字型にします。最後に後妻板を側板の間に挟むようにして半田付けします。
 


2.キャブ後妻板の上面が屋根の中に入るようにヤスって高さを調整します。しかも側板の上が屋根の下に合うようにします。良ければ後妻板の後ろ側と側板の前の方で屋根板に半田付けします。荷台の側板にある左右の突起のうち、片方づつをカットして平らに仕上げ、荷台の後妻板とをコの字型に組みます。後妻板は組みつけ易いようになっているので、直角さえ注意すればさほど難しくはないでしょう。歪まないようにするのが一番のポイントです。
 


3.出来上がった荷台をキャブと組み合わせます。荷台側板のテスリ上部を若干ヤスって、キャブ裾と荷台裾とが揃うように調整します。良ければキャブと合体させ、テスリ上部も屋根に半田付けします。これでシッカリしました。最後にワーパーを半田付けして上まわりは完成です。ドアーハンドルとヘッドライトケースは別に塗装しておいて最後に接着します。
 


 


第2回
1.ここからは下まわりの工作です。ギヤーフレームは角型スペーサーで箱型に組みますが、歪みがないようにすることが重要です。ここで歪んでしまうと、動きに直接影響しますので、何度もやり直す覚悟で落ち着いて作業しましょう。仮に動輪をセットしてみて、軽く廻ることを確認しておきましょう。廻らなければ(もしくはギヤーフレームに動輪がスッと入らなければ、歪んでいる証拠です。歪み無く組みたてられたら、床板に半田付けします。床板は若干反っていますので、あらかじめ指で平らに直しておきましょう。前後の向きには注意しましょう。床板でモーター穴がある方が、ギヤーフレームで軸穴から先端までの寸法が長い方(この写真で左側)になります。
 


2.網目床板を半田付けします。前後左右均等にフィットするように留意しながら、どこか一点でチョンと半田付けして、良さそうだったらモーター逃げ穴と周囲に半田を流して固定します。床板の前後にはカプラーを半田付けします。
 


3.ここからは床板に細かい部品を半田付けしていきます。まず、軸受を床板のスリットに差し込んで半田付け。次にブレーキテコを同様に半田付けしますが、左右2個あるうちの片方は、テコをニッパーなどて撤去して軸だけにしておきます。この軸だけにした部品が進行方向左側にくるようにします。また、この部品は上下を間違わないようにして下さい。床板のスリットは中央部一番外側の穴です。最後にフレームを半田付けしますが、床板にあててみて角度を整えてから作業して下さい。半田付けじたいは軸受部分とブレーキテコ部分だけでOKでしょう。
 


4.床板に握り棒を半田付けします。床板の裏側からしっかり半田を流しておきましょう。


第3回
1.さあ、楽しい塗装作業です。上まわりは全体を「常磐線エメラルドグリーン(マッハ模型89番)」に塗ってからマスキングして、荷台から下部分を「阪急マルーン(同59番)」に塗ります。47号機や63号機でお馴染みの組み合わせですネ。下まわりは黒でテスリは黄色く塗ります。


2.一応塗装が完了した状態です。正面のワイパーの塗装を剥がして荷台のシート・背当を紺色に塗ります。別に銀に塗っておいたハンドルや、黒く塗っておいたヘッドライトケースにリムやレンズを接着してから車体に接着して、別売の「アルプスモデル製インレタA(¥840)」でナンバーを入れて、クリアーラッカーでオーバーコートします。塗装が乾いたらレンズにプラ用塗料のクリアーを差しておきましょう。
 


3.塗り上がった下まわりにギヤーを組み込みます。3個並んだアイドラーギヤーは、似ていても歯数が違います。真ん中のギヤーは11枚、その両脇のギヤーは12枚です。見分け方は、真横から見て、歯の山が0時と6時の位置にあるのが12枚の方です。真ん中のギヤーは左右からシャフトをネジ込んで止めますが、その両側のはシャフトとEリングで止めます。動輪の軸箱が入る部分は、キサゲやカッターの刃などで塗装を剥がしておいて下さい。


4.集電ブラシのラグ部分を直角に折り曲げます。穴に少し掛かる感じで曲げても結構です。ここの写真のように半分に切ったコードを半田付けします。絶縁リングは写真のようにカッターで切り落としますが、穴には掛からないように注意して下さい。
 


5.モーターのラグ板のところに表記されている+側を右側(左の写真の向こう側)にセットして、1.4x2mm(小頭)ビスで床板に止めますが、仮に動輪を入れて噛み合わせを見てから、動輪を抜いて止めます。そしてもう一度動輪をセットしてから1.4x2mm(小頭)ビスで押さえ板を止めます。最後に写真のようにコードを床板の小穴に通してモーターに配線をします。


6.これで上まわりと1.4x4mmビスで止めて完成ですが、最後にDCC用デコーダーを積む場合を説明致しましょう。付属のモーターのままですと残念ながらデコーダーを載せるスペースはありませんが、このキットと同時発売の「DCC対応5tDL用コンバージョンキット」を使えば、可能になります。左側の集電シューは赤、右側が黒、モーターのラグ板は+側がグレー、−側がオレンジです。このモデルはヘッドライトの点灯が比較的に容易ですので、この組立見本では点灯可能にしてみました。
 使った電球は「フクシマ模型製1.5V球」です。このキットに入っているヘッドライトケースの取付足をカットして、そこを平らにヤスります。こういった小さい部品の場合には、真鍮などの板切れに半田付けしてやると、ヤスリ掛けも簡単に出来ます。電球の太さがΦ1.2mmですから、最後にΦ1.3mmのドリルで穴を開けます。ボディーの方の穴もΦ1.3mmに拡げておきます。このケーシングにライトリムとレンズを瞬間接着剤で止めて、更に電球も瞬間で接着します。これを黒のラッカーで塗ります。乾いたらリムとレンズをキサゲ刷毛で塗料を落とします。更にレンズ部分には、クリヤーのプラカラーを垂らしておきます。
 使った抵抗は1KΩです。抵抗は手元にあった数種類を試してみましたが、この程度の抵抗値が球切れする心配も無さそうでした。抵抗の茶色い帯の側に前側の1本を配線、もう一方のコードは基盤の白い線の代わりに配線します。青いコードは抵抗のもう一方の側です。黄色いコードは後側の1本を配線します。
 DCCを利用した任意の時に点灯可能なライトは、やはり魅力的です。DCCを使わずにライトを点灯させる場合には、12V用でしたらそのまま配線すればOKですが、それ以外の場合には御自分で試してみて下さい。
 さあ、これで完成です。形態上の点からウェイトを積んでいませんので、ぜひ何かを載せてやって下さい。見本では「木曽モジュール倶楽部製林鉄人形」のAとC(各々3体入¥1050)の中から座っているものを中心に乗せてみました。貴方なら荷台に何を載せますか?こんな事を考えられるのも、このモーターカーの楽しみのひとつですネ。
 














「助六平蔵」こと工藤芳夫さんに早速組んで頂きました。

「茶志内炭礦鐵道」や「網葦別電気鐵道」など独自の世界を構築しておられ、最近では「木曽モジュール倶楽部」に入会。実物偏重になりがちな木曽趣味に新しい風を吹き込んでおられる工藤氏。はたして彼はこのNo.14をどのように「料理」されたのでしょうか?

小さい写真はクリックして大きいサイズで御覧ください。



「森の鍛冶屋」
"朝"が水平に森を射抜いて行く。急激な温度上昇は樹皮や下生えの葉に纏っていた露を気化させ紗に変えた。その紗――朝露に向かってタバコの煙を吐き出すと近くの集材機のエンジンに火が入った。
「しゃっ、仕事、仕事。」と、"とっつぁん"は荷台の「仕事場」に上がり、酒瓶の木箱の「イス」に腰を降ろす。作業台の下の工具箱を引き出していると、「とっつぁん、噛んじまったみたいだ。コイツを頼む!」と荷台にサドルブロックを置いていかれた。
「ったく、ちったぁ大事にしやがれ・・・」と振り向きもせず長年使い込んだパイプレンチに注油を始めた。
「そもそもだ、道具ってぇヤツは・・・」
"ヤマ"の一日が始まった。





MC/No.14のインプレッションを担当する事になり、まず最初に西裕之氏の「木曽谷の森林鉄道」を紐解きました。"どう組むか?"のネタ探しです。No.14の写真キャプションに"原型は荷台上の屋根がない"とあります。ドクトルもりこー氏は「自由にモディファイしても良いですヨ」との事でしたので、この"荷台オープン仕様"と即座に決定。
 工具を満載して"ワークショップカー"にしよう、作業テーブルに金床と万力、酸素/アセチレンボンベを積んで、幌枠パイプには集材の索道用ブロックをぶら下げて・・・、などとイマジネーションばかりが膨らんでいき・・・というより、"妄想が暴走"しだした所で工作開始です。

 


 下まわりは基本的にはMCVと共通で、組説通り歪み等に充分注意して組んでいきます。ただ、私には"何度もやり直す覚悟が無い(時間も無いです。by もりこー)"ので一発で決まるよう、ベークブロックや木片を使って直角や平行を出しながらハンダ付けをしていきました。DCC用デコーダーを載せる為のモーター換装は、MW社のコンバージョンキットの発売と前後したので、自作で加工。モーターはアルモーターの軸を短くカット、デコーダーはレンツのLE511Wです。
 車体の組み立てに移って、まず後妻板に付けるプロテクター。製品では屋根の奥に付くためか洋白のエッチングヌキですが、屋根を取ってしまうとかなり目立つ部分ではなかろうかと思い、Φ0.3洋白線を方眼紙と両面テープを使い、銀入ハンダで組んだものに交換。ロスト一体屋根板は継ぎ目表現のところで切り離し、ヘッドライト取付穴は点灯化の為にΦ1.4に拡げて真鍮パイプをハンダ付け。後部妻板のライトは"ホイットコム原形"の大型ヘッドライトをサーチライトに見立てて同様にパイプで点灯化準備しました。
 さて、ハイライトの荷台の加工です。荷台の横パネルと背もたれ部のフレームをカット。パネル内側のベンチは糸ノコで慎重に切断して、補重のために厚く作られている部分を裏側のテーパー部が平らになるまで薄く削ってから(x2枚)、幌枠パイプの差込用に外径Φ0.6のパイプを取り付け。後アオリ戸も同様に薄く削り、下側ヒンジを残して切り離して下廻りの床板後端にハンダ付け。"因数分解"された荷台のもうひとつのパーツ、ベンチは長さを短くしてキャブ後部妻面の作業テーブルの受けとして利用してみました。幌枠はΦ0.4洋白線を銀入りハンダでチョンチョンと。



 車体のカラースキームは「上松のMC/No.5」に準じてクリーム/グリーンにしましたが、クリームは暗めのマッハ15番(特急クリーム)に。下廻りは"ウチ"の標準色「NATOブラック」です。レタリングはアルプスモデル製と自家発注製を使いました。  小物の塗装も終わり、さあいよいよ荷台のセッティングです。ひとつずつ工具類を瞬着で固定していく毎に想い描いた"物語り"が拡がっていくのでした・・・。
 追記:「キット組立インプレッション」と云うより「No.14の楽しみ方の一例」になってしまいましたが、皆様への刺激の一端になれれば幸いです。

 
Diorama was made by Munehiko Mitsuzawa