キット組立講座

中標津の2軸客車

久しぶりの簡易軌道モノの登場です。この車輛は簡易軌道の前身、殖民軌道で使われた客車で潜り込むような小ささが新鮮な魅力となっています。トンネルも無いような北の原野を走っていたのですから、もっと大きくても良さそうなものですが、恐らく馬力での牽引も考慮して、軽く作る必要性からこの大きさになったものと思われます。この製品は最近発見された実車の図面をもとに模型化をしましたが、プロトタイプに拘らずに自由な発想で、模型ゆえの楽しみのひとつとして、「自分の軌道」の客車として活躍させてやるのも良いでしょう。軸受に細密なロストを奢り、エッチング処理されたプレス工法を主体に設計された本製品は、エッチングヌキ製品では決して味わえない、温かみのあるものに仕上がったのではないか、と自負しております。

第1回
1.まず、側板から工作を始めます。側板に窓枠を半田付けしますが、窓桟をガイドに充てると反ドアー側に少し隙間が出来ると思いますが、これでOKです。この段差の部分に後ほど妻板が付きます。窓枠の下には大きな角型の半田付け用穴が明いていますが、そこにはあまり半田を残さないようにして下さい。塗装後にはここに椅子が付きます。そして窓の中ほどにある凹部分にもテスリを、ドアー脇の側板上に帯材を半田付けします。帯材は側板の高さと同じになるはずです。側板の窓下の凹部分にウインドウシルを半田付けしますが、シルの裏側に半田メッキをしておくと綺麗に仕上げることが出来るでしょう。凸部の幅が広い方が下になります。万が一木目に半田が流れてしまったら、針などでほじくって綺麗に仕上げておきましょう。現段階では見た目にさほどではなくても、塗装をすると案外目立つものです。
 


2.妻板にも窓枠を半田付けします。上下方向は妻板の上縁とツライチになるようにします。つまり窓枠の桟は細い方が上です。この妻板を側板と組み合わせますが、最初に反ドアー側から作業した方がやり易いでしょう。まず、妻板と側板とをL字型に半田付けして、もう一方の側板も半田付けしてコの字にします。それからドアー側の妻板を、ドアーに被せるようにしながら半田付けします。
 


3.箱状になったら上下止板を上方から落とし込むようにして、側板の下面とツライチになるように両端に半田付けします。最後にテスリを半田付けして、上まわりは出来上がりです。屋根板は別に塗装をしておいて、接着すると良いでしょう。但しこの段階で、スムースに屋根がはまるか、ボディーと屋根板との間に隙間はないか、を確かめておきます。屋根板は大きなロストワックスですから、万が一反りなどがある場合には、指で軽く捻るなどして修正しておきます。
 


第2回
1.今度は床板まわりの工作です。床板の周りにフレームとエンドビームが付きます。つまり床板の板厚は見えない方向で半田付けします。まずはフレームから半田付けしてからエンドビームを半田付けします。カプラーの湯口を段差部分でカットしておいたものをエンドビームに半田付けします。フレーム外側にはステップを、車端から3.5mmのところにその外側がくるような位置に半田付けします。


2.軸受は左右共通になっていますので、片側のブレーキシューをハンガー部分からカットして仕上げて下さい。ドリル加工の際に付いたオイルを中性洗剤でよく洗ってから、メタルを半田付けします。


3.軸受は車輪を挟みながら床板にビス止めします。軸受の下面が床板と平行になっていますか?ロストが歪んで平行でない場合には、ヤットコなどで修正して下さい。車輪がきつ過ぎずゆる過ぎなく、軸端がメタルの底に当たっているような位置で、ビスを締めて止めます。そして最後にサブフレームを軸箱下の段差部分に素早く半田付けします。半田付けが済んだら、ビスを外して塗装に備えます。


第3回
1.塗装です。下まわりは黒一色ですので気が楽です。一旦片側の軸受を外して、車輪を組み込みます。その時に別売のグリーセムをまぶすと、より転がりが良くなるでしょう。そして出来上がった下まわりです。
 


2.上まわりの色は残念ながら現段階では判りませんが、残っている僅かな写真から判断すると、窓下の部分は白、屋根はグレー、車体は黒ないし茶色のようですが、作例では少し色気を出そうと茶色に塗ってみました。一般的には白い帯は僅かな部分ですから、あとで筆差しでも良いのですが、作例ではマスキングが楽なので、まず全体を白く塗って、白が入る凹部をマスキングして茶色を塗る方法を採りました。屋根は単体でライトグレーに塗ります。塗装をする時には例によって、ネジ穴のあるものには竹串などで、屋根板のようなものにはカーペット用強力両面テープを巻いた割り箸などで保持すると、作業がやり易いでしょう。


3.妻板の窓の脇の部分で(ここだけで大丈夫でしょう)屋根板を少量のエポキシ系接着剤で止めて、全体をクリヤーラッカーでトーンを整えてから、窓ガラスをプラ板などで作って貼ります。別に塗装しておいたシートを窓枠の角穴の下合わせで接着して工作も完了。最後に下まわりと1.4x2mmビスで止めて出来上がりです。さあ、貴方ならこの愛くるしい客車をどんな風にデビューさせてあげますか?