キット組立講座

上松のE型貨車(No.1〜3)/木製運材台車(Dタイプ)

E型貨車は山奥で暮らす人々に生活物資を届ける重要な役目を担って活躍していました。通常は上松〜本谷間で運転されていた定期列車の「みやま号」に連結されていました。従って貨車とはいうものの、使い方は荷物車、さしずめ国鉄ならば「マニ」といったところでしょうか。
 たかが貨車と言うなかれ、決して手を抜くことなく真正面から取り組んだ製品がこのE型です。メリハリ感のある側面扉の再現や、号車によって違う表情を克明に再現しました。

第1回
1.車体から組み立て始めます。まず側枠の下側に垂木を半田付けしてから、スジ目板を半田付けします。半田を流すのは、外周だけで大丈夫でしょう。扉を開いた状態にしたい場合には、開口部の補強板を糸ノコなどでカットしておきます。
 


2.ドアレールを半田付けします。号車により異なりますので、側面図をよく見て下さい。写真は上からNo.1・No.2・No.3です。まず下のレールについてですが、No.1とNo.3は垂木の上の面に揃うように、No.2は垂木の中央にくるように半田付けします。それからレール支えを半田付けしますが、号車により個数が違います。小さな部品ですから無くさないように注意してください。No.1には上のレールが側板に付きます。実際にドアーを当ててみて、その位置を決めましょう。


3.ドアーを半田付けしますが、その前にテスリをヤスリ取っておきます。開き戸の中央部分にしかテスリはありませんので、ドアーは結局左右各2個作っておくことになります。ドアーは裏側の補強板を利用しつつ、開口部の周囲に半田を流しておきます。ドアーを開けた状態にしたい場合は、窓ガラスを貼ってから接着するのが良いでしょう。更にドアー窓には保護枠を半田付けしますが、あらかじめ保護枠の裏側に半田を少し流しておき(半田メッキ)、ドアーの上に乗せてフラックスを垂らしてから、その近くにコテを当てて半田を溶かして付けると良いでしょう。
 


4.妻板にもまず保護枠を半田付けしますが、妻枠を合わせてみて、干渉しないように注意しましょう。そののちに妻枠を半田付けしますが、左右部分の段差が左右均等になるように注意します。そして最後にテスリを半田付けします。このテスリは割りと出っ張っていますので、1mmくらい隙間を開けると良いでしょう。
 


5.これで側板と妻板が出来ましたので、これらを組み合わせて箱にします。各々は「ホゾ組み」になっていますので、直角にだけ注意していれば位置決めは楽でしょう。仮にチョンと半田を付けて(例えば上端部で)、良さそうだったらそのチョンの反対側から(この場合だったら垂木の方から)半田を流していきます。箱になったら上下止板を垂木の上に乗せるようにして半田付けします。Cの字に開いている方が内側にきます。


6.次は屋根板です。屋根板には端板が付きますので、これをはめ込んで半田付けしますが、端板はワイヤーカット部品ですので、ヘソが飛び出ています。まずはこのヘソをヤスリ仕上げしてから、半田付けして下さい。


7.屋根板に雨樋(ドアレール)を半田付けしますが、号車によってその位置は違います。No.2とNo.3はその下端部と揃えて半田付けしますが、No.1だけは屋根の立ち上がり部分の中央部に半田付けします。


8.屋根板を車体と組み合わせます。半田は妻板の上部だけで大丈夫でしょうが、素早くしないと屋根端板の半田が外れてしまいますので、注意してください。No.3はドアーの滑車がドアレールを跨ぐようになりますので、注意深く滑車部分を曲げてから屋根板をはめ込みます。はまったら、また注意深く復元しつつドアレールに合うように修正します。これで上まわりは出来あがりました。
 


第2回
1.まず床板まわりです。床板に丸いボルスターを半田付けしてから1.4x2mmビス4本で車体に仮止めします。平らな机などの上に320〜400番位のサンドペーパーを置き、その上でこのボルスターが垂木とツライチになるようにヤスッて仕上げます。次は台車の組立です。台車は鋼製と木製とは用意されていますので、別々に説明いたします。鋼製台車の場合。台車枠に軸受をはめ込み半田付けします。台車枠に欠き取りの無い方のエアーホースは、コックの先でカットしておきます。


2.木製台車の場合。台車枠に軸受を半田付けします。中枠にエンドビームを半田付けします。2本のピンが長い場合には少し短くヤスッて下さい。ブレーキテコをエンドビームに半田付けしてからブレーキポストを半田付けします。
 
 


第3回
1.塗装に移ります。この貨車は全くの黒一色ですので、塗り分けもなく気が楽です。しかし、それが逆に平坦な感じになり勝ちですから、ここはひとつウェザリングに挑戦してみませんか。まず、黒く塗って充分乾いたところで、プラカラーのライトグレーを筆塗りしていきます。かなりラフな感じでもOKです。写真を御覧になって「ウヒャー」と思われるでしょうが、大丈夫ですよ。


2.これまた充分乾いたら、5mm角位にカットしたボロTシャツなどの柔らかい木綿に、プラカラーのシンナーを浸して、ピンセットでつまんで塗ったプラカラーを拭っていきます。くれぐれもピンセットで塗面を傷つけないように注意しましょう。そうすると、凸部分のグレーだけが拭き取られて、凹部分に入り込んだグレーは残るはずです。また、凸部分にしても黒とはまた違った良いニュアンスになったのではないでしょうか?作例ではこの段階で「アルプスモデルのインレタA」を使ってナンバリングをしています。このインレタの保護の意味も含めて、クリヤーラッカー(若干艶消しが良いでしょう)をサッとオーバーコートしておきます。


3.ドアーを開いた場合には折角ですから、何か荷物でも積み込みましょう。作例では当社製の「一升瓶セット」やワーゲンクラブ会員の方から頂いた自転車などを使ってみました。床板をまた1.4x2mmビス4本で車体に止めて準備完了です。


4.台車の組立です。鋼製も木製も1.4x2mmビスで組み立てます。ビスで組み立てたら、ブレーキシューを接着しますが、鋼製の場合にはあらかじめセンターピンを組み込んでおくと良いでしょう。
 
 


5.鋼製台車にはドローバーが付きますので、ピンを使って組み立てます。ピンは極く少量のエポキシ系接着剤で止めておき、エアーホースはコックと干渉しないように、それらしく曲げておきます。最後に台車をセンターピンで床板に止めて出来あがりです。


さあ、出来上がりました。滝越の住民は皆さんの作ったE型で運ばれてくる品物を待っていますよ。

 








付記:木製運材台車について。

1.ステイクポストには、半分の長さに切ったクサリを先端部に引っ掛けてから軽くつぶします。


2.運材台車の場合にはドローバーが付属しますので、ピンで止めておきます。