キット組立講座

木曽のキャブフォワード(122・130・135号機)

木曽森林鉄道の「表の顔」たる酒井製C4。製造当時流行していた流線型のデザインを巧みに採り入れたり、今までの常識をあっさりと覆してキャブ側を前位とするなど、まさに画期的な機関車でした。当社ではその横綱格のDLを、今まで培ってきた様々なノウハウを投入して、ついに模型化しました。写真だけ見ていると、スケールさえも錯角してしまうようなスーパーディテールさに、恐らく皆さんは驚かれることでしょう。

第1回
1.まず最初にボンネットの組み立てから始めましょう。この製品は塗り分けの手間を少しでも軽減できるように、キャブとボンネットとは別になっていて、塗装後にビスで組むようになっています。ラジエターの段差になっている部分をキサゲハケなどで綺麗に磨いて、ボンネットと組み合わせます。まずは裾の部分でラインを揃えてチョンと半田付け。そして反対側も同様に。更に天井の部分に半田を流します。これで一応眺めて歪みなどが無ければ、左右の部分に半田をしっかりと流します。表側から見た時に、継ぎ目にうっすらと半田が滲んでいるようにします。そうでないと塗装後に継ぎ目が目立つからです。ボンネットは前後を間違えないようにしましょう。


2.次にボンネット後部板をツライチ合わせで半田付けしますが、後部板の肩の部分は少しだけ斜めにヤスッておくと収まりが良いでしょう。これでボンネットもしっかりしました。


3.ラジエターには号機に合わせたグリルを半田付けしますが、グリルは予め丸い棒に指で押し当てて曲げておきます(表裏を間違えないように)。作例ではΦ15のフェルトペンの軸を使いましたが、もう少し細い方が良かったかも知れません。曲げたら裏側にうっすらと半田メッキをしておき、ラジエターに半田付けしますが、最初は上の中央部でチョン付けして傾きなどをチェックしてから、今度は下をチョン。良ければ全体に半田を流します。グリルは号機により大きさや格子の本数などが異なります。写真の左から順に122/130/135です。
 




4.今度は細かい部品を付けていきます。ハンドレールノブは仮にハンドレールを通してボンネットに半田付けすると、一直線に揃って良いでしょう。給油口は垂直になるように半田付けします。122/130はさほど気になりませんから直付けで良いとしても、135は背が高いので特に留意しましょう。135には連結確認用ミラーも装備されていますので、アームをラジエターの穴に差し込んで半田付けしてから、ミラーを写真のような角度(運転手から見て、連結面が見えるような角度)に半田付けします。これでボンネットは出来上がりました。但し、DCC用デコーダーを搭載する場合には配線を逃げるために、後部板は写真のように切り欠きを大きくしておきます。
 




第2回
1.次はキャブの組み立てです。まず後部妻板に側板を半田付けします。ボンネットの時と同じように、最初は裾の部分でチョン付けして次に天井の部分。良ければ左右の部分にしっかり半田を流します。次に前面を半田付けしますが、これも同様の手順で作業をしていきます。なお、正面のテスリは塗り分けの便を考慮して、敢えて前面には半田付けしないでおきます。従って、テスリにノブを通したものを前面の穴をガイドに半田付けしておきます。122号機だけは正面から見て「へ」の字型になります。また別売の防寒マスクを装備される方は通風孔に合わせてみて、納まりが良いように前面の穴を仕上げておきます。シッカリしたところで、サンドペーパーの上で裾を平らに仕上げます。
 


 


2.窓枠を半田付けします。これもラジエターグリルの時と同じように、裏側に半田メッキをしておき、本体に半田付けしますが、ヒンジを表現した本体の突起部に突き当てるように位置を決めます。122のみは窓が平行四辺形になっています。また、お好みにより窓を少し開けた状態にするのも良いでしょう。通風孔のグリルも同様に半田付けしますが、122のみは4本タイプ、その他は5本タイプです。後部の窓枠も同様に半田付けします。これは全車共通です。
 


3.細かい部品を半田付けしていきます。前部ヘッドライトはレールに対して平行になるように留意しましょう。ドアー上の水切りを半田付けする時には、側板に半田メッキをしておくと気持ち良く半田が流れるでしょう。なお、122は初期において水切りが装備されていませんでしたので、敢えて付けないのも良いでしょう。三者とも形状は異なり、122は短くて出っ張り具合が高いタイプ、130は小さくて低いタイプ、135は長いタイプです。各々ドアーと0.5mm位すき間が開くようにして下さい。135のみは連結確認用ミラーが装備されますので、ボンネットの時と同じようにします。また、ドアー脇のテスリは塗装後に接着しますので、半田で埋まってしまった穴を0.4mmのドリルで開け直しておきます。また、DCC用デコーダーを搭載する場合には配線を逃げるために、後部妻板は写真のように切り欠きを大きくしておきます。
 


4.この製品の特徴はHOeでありながらキャブインテリアが装備されていることです。それでは楽しいインテリアを組み立てましょう。床板に各々の部品を半田付けしていきますが、122のみのハンドブレーキはハンドルが後ろを向きます。その他は進行方向右側を向かせます。床板の裏側はツライチに仕上げておきましょう。他には側面の窓枠の上下部分を写真のようにニッパーなどでカットしておきます。実際にキャブに合わせてみてシックリはまることを確認しておき、全体を塗装してから黒く塗ったこの部分を接着します。これでキャブは完成です。
 


第3回
1.さて次は下まわりの組み立てです。まずギヤーフレームの組み立てからです。角型と板スペーサーのホゾで組んでいきますが、ここで一番重要な事は「歪みなくシッカリと」です。歪みなく組み上がったら、上面をツライチに仕上げ、更に下面を角型スペーサーが光るまでツライチに仕上げます。
 




2.次は床板まわりの組み立てです。床板の縁に縁板を半田付けし、横から見た時に継ぎ目が目立たないように、ペーパーの上で平らに仕上げます。エンドビームは床板に対して垂直になるように留意して、半田付けします。更にステップを縁板に沿わせるように半田付けしますが、外観図を見ながら左右間違えないようにしましょう。
 


3.列車名札差は二つの部品から構成されています。写真の左のようにランナーからカットして(下の部分をカットしてしまわない様に注意して下さい)、右のように組み立てます。エッチングで凹んだ足の部分を床板に差し込んで半田付けするので、残しておきます。


4.床板に細かい部品を半田付けしていきます。カプラーやエアーホース、ステップなどのエンドビームに付く部品は、裏側に出ないように取り付け部分を短く仕上げてから半田付けすると良いでしょう。各号機でエアーホースの位置が違うのが写真から判るでしょうか。左から順に122/130/135です。キャブ側の握り棒は、取り付けボスの部分を少し短くしておき半田付けします。完成後ぐらつき易い部品ですので、しっかりと半田を流しておきましょう。122のテールライトは床上に付きますが、他の号機はエンドビームにテールケースを表側から差し込み裏側で半田付けします。但し、テールケースの穴を塞がないように注意しましょう。


5.台枠の組み立てです。まず(122のみは死重を半田付けしてから)2個のイコラーザーと1個のイコライザー受を半田付けします。但し、中央部のイコライザーの上の部分は0.3mmほどヤスッておき、床板に付けたステップと干渉しないようにして下さい。次に軸受を半田付けしますが、イコライザー受に接する部分のバネ受は写真のように0.3mmほどヤスッおいて下さい。また、軸受を半田付けしたら、イコライザーやイコライザー受にバネ受が接するように調整しておきます。これで配線以外の半田付け作業は終わりです。台枠の裏側はツライチに仕上げておきます。
 




6.塗装に入る前に床板にはモーター止板を1.4x2mmビス(大頭)で止めておきます。また、集電ブラシには配線コードを半分に切ったものを、写真のように半田付けしておきます。モーター側への配線は塗装後に組み付けてからになります。
 


第4回
1.塗装に掛かります。床板から下は黒ですが、ボンネットとキャブは号機により塗装色は異なります。大まかに云ってしまえば上半分はクリーム(近似色はスカ線クリーム)腰の部分はマルーン(近似色は阪急マルーン)ですが、122と135は屋根上とボンネット上がライトグレーです。130はボンネットの上半分はクリームではなくライトグレーです。例によってネジ穴や小穴のある部品は竹串を刺して、穴のない部品は両面テープを竹串に巻いて保持します。


2.床板は全体を黒く塗ったら、エアーホースのコックに黄色を差します。握り棒はカッターやキサゲ刷毛で丁寧に塗装を剥がします。塗装が済んだら122はテールライトのレンズ部分に妻楊枝などで赤を差して乾かします。乾いたらクリヤーレッドを塗っておきます。130と135はテールライトレンズを接着してから、やはりクリヤーレッドを差します。どうですか?そのままよりも深みがある色になったと思います。


3.ギヤーボックスの組み立てです。アイドラー軸・メタルワッシャ・集電シュー・デルリンワッシャ・ギヤーボックス・アイドラーギヤー・デルリンワッシャ・集電シュー・メタルワッシャ・Eリングの順に組み立てていきます。アイドラーギヤーにはセラミックグリスを、アイドラー軸には僅かなオイルを塗っておくと良いでしょう。


4.動輪の軸受部分にも少量のオイルを塗っておき、回転を滑らかにしておき、ギヤーボックスに組み込み、動輪押さえ板を1.4x2mmビス(小頭)で止めます。この時に軸箱はちゃんとギヤーボックスに納まっている事、集電シューが動輪にちゃんと触っている事を確認しておきます。出来上がったギヤーボックスを床板に1.4x1.4mmビスで仮止めします。
 


5.モーターを1.4x2mmビス(大頭)でモーター止板に軽く止めて、ウォームギヤーを1.4mmイモビスで止めます。ギヤーの噛み合わせを調整して、程良いところでモーターをしっかり固定します。モーターはマシマのラベルが下側に来るようにします。配線は床板の小穴を通して、クロスしない向きでモーターのラグに半田付けしますが、ラグはあらかじめ折り曲げておいて下さい。


6.DCCの場合の配線についても書いておきましょう。作例では一番小型のレンツ製LE0511Wを搭載しました。ライト関係は点灯させませんので、青・白・黄のコードは根元でカットしておきます。オレンジとグレーのコードは根元から55mmで、赤と黒のコードは根元から35mmでカットします。配線は写真のようにオレンジとグレーはモーターに、赤と黒は集電シューに半田付けします。
 


7.キャブインテリアは京浜東北ブルー(当地では大糸ブルーと言います)で塗り、メーターパネルの凹んだ部分には白を差しておきます。ブレーキハンドルの握り部分は塗装を剥がし、シートの座席と背当てはダークブルーに塗ります。メーターパネルはキャブ前面に貼りますが、インテリアアッセンブリーは床板に(実際にはギヤーボックスにですが)ウエイトを介して1.4x4mmビスで止めます。
 


8.インテリアアッセンブリーを床板に固定した状態です。DCCのデコーダーは写真のように配線を曲げてキャブ天井に隠すようにしますが、くれぐれもプリント基板の配線がショートしないようにして下さい。
 


第5回
1.上まわりの塗装です。全体をクリームに塗ったものをマスキングしていきます。但し、130号機のボンネットだけはライトグレーにあらかじめ塗っておきます。マスキングの方法は様々ですが、ひとつの方法をご紹介しましょう。私は昔から「金太郎塗り」の場合はこうやっています。まず原寸の正面図の上に透明のプラ板をセロハンテープで止めます。次に塗り分け線の上をカッターでなぞります。そうするとプラ板に溝ができます。今度はそのプラ板の上にマスキングテープを貼り、溝をなぞるように切って行きます。これを車体に貼り付けます。2色目は阪急マルーンです。
 


 


2.マルーンを塗ったら、今度はライトグレーです。130号機のキャブは屋根のグレーは無しです。3色を塗り終わったら、正面とボンネット先のグリルを、カッターやキサゲ刷毛で丁寧に塗装を剥がします。ノブを銀色に塗っておいた正面のハンドレールをエポキシ系で接着し、防寒マスクを付ける場合には、あらかじめ塗っておいたものを接着します。見本では「神戸市電上部色」を使いました。ボンネットのハンドレールも磨き出し、ノブは銀色に塗ります。また、この段階でドアー脇のテスリや、側面Hゴム窓も接着しておきます。135号機の場合はミラーも磨き出します。
 


 


3.排気管・正面タイフォン・122/135号機のヘッドライトケースを黒く塗ります。ライトケースの内側は銀色に塗っておきましょう。130号機のヘッドライトケースだけはクリーム色です。タイフォンのラッパの内側はΦ1.2ぐらいのドリルで手揉みで磨いておきます。キャブ前後のHゴム窓に黒を塗ります。写真は左から122/130/135号機の順です。
 




4.122/130号機には銘板を貼ります。但し位置は違いますので、外観図を参考にしてください。ヘッドライトリムとレンズを組み合わせたものを、ヘッドライトケースに接着しますが、リムの座りが悪い時には、後ろの段差の部分を少しヤスッてください。さて、ここでクリヤーラッカーでオーバーコートをして色を落ち着かせておきます。乾いたら、銀色に磨き出した部分をもう一度磨いておきましょう。


5.窓ガラスをプラ板などで貼ってから、メーターパネルを前妻板に接着しますが、その床板から1mmほど隙間を開けておいて下さい。結構イイ感じになってきました。キャブとボンネットは1.4x1.4mmビスで止めますが、柄の太いドライバーだと締めにくいかも知れませんので、出来るだけ柄の細いものを使ってください。写真は左から122/130/135号機の順です。
 


 


 


第6回
1.DCCのデコーダーを搭載する場合は、屋根裏にカーペット用などの厚手の両面テープを貼っておきます。人形を乗せる場合にはあらかじめ塗っておいて、運転手はキャブ中央側から横に載せ、助手は上から滑り込ませます。


 


2.さていよいよ上下の組み合わせです。まず台枠を床板に1.4x2mm(大頭)ビスで止めます。次に1.4x4mmビスを使ってウエイトを止めながらギヤーフレームを床板に止めます。モーターのラグ板が車体に当たっていないかを注意しましょう。
 




3.最後の仕上げに別売の「アルプスモデル製・軽便インレタ木曽森林(A)」を使ってナンバーを、「同社製・軽便サボ木曽森林」を使って列車名を貼ると、写真のようにより感じが良くなるでしょう。


さあ、出来上がりました。皆さんだったら彼等にどんな列車を牽かせてあげますか?運材列車?それとも「みやま号」ですか?