穂高神社御船祭り


毎年9月27日は穂高神社の「お船祭り」です。正確にいうならば、お祭りは26日から始まっているのですが、26日は純然たる神事のため、一般的には27日ということになります。しかも、そのハイライトは何と云っても穂高神社の境内で行われる「お船曳き」とその「お船のぶつけ合い神事」です。ここではそのハイライトを中心に御案内致しましょう。
 因みにこの穂高神社のお船祭りを行ったあと、上高地明神池にある穂高神社奥院で神事が行われ、一連の神事が完了します。



 

お船は毎年5艘製作されます。大人船と呼ばれ戦闘用のもの(長さ12m、高さ6m)が2艘、穂高神社の氏子区である3地区で作られた子供船と呼ばれ辻つじを廻るもの(長さ8m、高さ5m)が3艘、神社に奉納されます。今年は9月10日に行われたのですが、この子供船を各部落に引継ぎながら廻っていきます。

 

 

 

 

お船はぶっとい角材で作って木の車輪がついた土台の上に、しなやかな木で作った骨組みが船の形に組まれ、中央部には時代劇のシーンが、穂高人形と呼ばれるに張りぼての人形によって演出されています。このシーンは毎年作り直されますが、だいたいNHKの大河ドラマに題材をとっているケースが多いようです。お船の両端部には、いつの時代に使われたものか、古〜い着物が彩りを添えています。各々の船の中には子供たちが乗り込んでいて、笛太鼓でお囃子を奏でています。

 

お祭りですから様々な屋台も出て雰囲気を盛り上げています。ボクは今年、地区の役員なので法被が支給されています。この姿で子供船を引き回し、そのあとは大人船を押して戦闘に参加します。

 

神事は午後3時から始まります。各地区の代表が神殿に上がり、様々なお祓いを受けます。そもそも、このお船祭りは神に捧げる行事ですから、その代表がお祓いを受けて各部落の船に戻り、それから境内に船を引き出すのです。観光客は思い思いの場所に陣取り、今かいまかと待ち構えています。

 

神社の鳥居を通過できるように作っているはずなのですが、たまには鋸でてっぺんをカットする場合も出てきます。境内に引き出された子供船は、3回廻って退場します。それが3艘続きます。そのあとに大人船の登場です。ボクは子供船の綱を曳き、退場するやいなや、大人船の押し役に転身します。

 

 

境内まで大人船を押し出してから、そっと抜け出してこれらの写真を撮ったのですが、船同士がぶつかり合うときの激震はもの凄いものがあります。丸太を押している手が痺れるほどです。ぶつけては引き、また「せいのー!」で押し出してぶつけ合います。10数回もぶつけ合いが続き特に勝敗はないのですが、いかに勢い良く相手方を押し出すか、がポイントになります。衝突するたびに、船体はギシギシと音を立ててたわみ、すざまじい衝撃を間近で見た観客からは、どよめきと盛んな歓声が上がります。男たちはみな汗だくになって、この一見無意味な作業に没頭し、境内から引き出す頃には、もうボロボロになるように疲れ果ててしまいます。



お船祭りが終わると、一気に冬への坂道を駆け下りていくような気分になります。