当社がプレスにこだわる理由


先日あるお客様から「なぜモデルワーゲンはプレスにこだわるのでしょうか?エッチングでも十分綺麗に窓等が抜けると思いますが、何か理由でもあるのでしょうか?」という問い合わせがありましたので、ここで改めてお話をしてみようと思います。

確かにエッチングでも窓などを抜く事は可能ですが、綺麗に抜くためには板厚に制限があります。
 まず、そのエッチング抜きの方法から御説明致しますが、右の図をご覧下さい。

通常は表側と裏側から金属を腐食させて、最終的に抜き落とされるわけですが、例えば板厚が0.3mmとすると、通常は表側から0.1mm、裏側から0.2mmを腐食させます。
 これが板厚が0.4mmになれば、表側から0.15mm、裏側から0.25mmになります。

金属を腐食させると、その断面は直角ではなく、どうしてもテーパー状になってしまいます。その腐食度が高ければ高いほど(言葉を替えれば板厚が増せば増すほど)開口部と腐食された奥側との差が目立つようになります。
 つまりエッチング抜きの場合は両側から腐食させるわけですから、両側からテーパーがついて刃物のような断面になります。

板厚が0.3mmですと肉眼では確認しづらいですが、板厚が0.4mmになればプレスで抜いたものと比べれば判ります。
 ですからエッチング抜きを多用しているメーカーさんの製品では、板厚0.3mmのケースが多い理由です(稀に0.4mmの部品もありますが、その断面は非常に汚いです)。

また、両面から腐食された金属は剛性も変質して、同じ板厚でも素の状態のものより柔らかくなってしまいます。
 当社では例えナロー車輛のように小さなものでも、手に持ったときのヘナヘナ感を与えないようにボディー本体の板厚は0.4mmを確保したく、また組み立て易くするためにある程度の剛性を持たせるべく、窓などはプレスで抜くようにしております。

確かにエッチング抜きの方が金型を必要とするプレスよりもコストは何倍も安く済みますし、それにも増して国内で鉄道模型のような少ロットのプレス加工が出来る工場も激減していることから、実際にプレスで製品作りをしたくても出来ないような状況になりつつありますが、上記のような理由で当社はプレスにこだわっております。

オーディオの趣味でも、ただCDを聞くだけならばCDラジカセでも聞けますが、耳が肥えてくると本格的なコンポの音色の違いや、真空管アンプを通って出てくる艶のある音色の違いが判るようになると云います。
 こと模型趣味も同じで、ただ形になっているだけの模型もあれば、当社の製品のように素材や作りにこだわったものもあります。

どちらをお選びになるかは皆様次第ですが、折角この趣味に足を踏み込んだからには、違いが判る趣味人であって頂きたいと思います。
 そういう意味でも、最近になって新しいお客様が徐々に増えてきていることは大変嬉しく、当社の方向性が御理解頂けたのかな?とも思っております。



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