出羽鮎川を出た列車は、2分程で分岐駅である鶴木に到着する。鶴木には車庫があり、本社もここに所在しているため電鉄中心の駅である。ここから、一路山に向かってなだらかな勾配を登って、学校前・田中・有明・牧・草深・八幡前・湯ノ山温泉と停まっていく。湯ノ山温泉からは出羽バスが連絡しており、八幡平中腹の大蔵温泉まで行けるようになった。 列車は鶴木に着いたようだ。鶴木は古い宿場町。奥羽本線敷設にあたって町の宿屋や飛脚連が鉄道敷設反対をしたために、路線は町はずれの鮎川部落を通過することになった。次第に町は寂れ、結局自前で鉄道を敷設することとなったのだから、皮肉なものである。唯一活気らしいものといえば、電鉄の車庫を中心とした作業場の音くらいなものだが、それとて昼さがりの構内はひっそりとしており、留置線に点在する電車や庫の脇に停められた除雪機関車も息をひそめているかのようだ。
ホームのベンチで待つこと30分あまり。踏切の警告音が鳴り出し、男鹿湊からの列車が到着したようだ。この列車は鶴木で折り返し、また男鹿湊へと向かう。 |