記憶の彼方から

〜秋葉山麓の伐採軌道〜



ことの発端は病院の待合室に置いてあったファッション雑誌「anan」を何気なく手にしたことからだった。パラパラとめくっていったら、一枚の衝撃的な写真が目に飛び込んできた。幸いにも現行号だったので、その足で本屋に飛び込み買ったのは云うまでもない。
 ananの編集部に電話をして撮影地が静岡県秋葉山麓の製材所だということを確認して、翌休日に急行した。浜松で新幹線を降り、レンタカーを借りて現地に飛んでいったら、確かにその製材所の軌道があった。
 当時のメモを引用する。
 「栗田林業の軌道」
昭和3年より、軌道延長5kmあまりで開業した山トロ方式の軌間610mmの伐採軌道である。昭和28年までは天竜川支流の気田川まで運材していたが、降雨時は秋葉山三尺坊登山口の鳥居付近より筏により栃川の流れに頼ることもあったという。しかし、昭和28年よりは、前述の鳥居付近からトラックにより運材していた。と同時に、伐採に伴い徐々に軌道を縮小してゆき、昭和53年には残りの1kmあまりの軌道も過半を撤去して軌道敷を拡張してトラック輸送するようになった。しかし、本年内には残り数100mになってしまった軌道も撤去する予定である。(昭和53年5月記)

 

 

 

 

 

 

取材ノートに貼り付けられたananの写真と、採寸した運材台車。
残念ながらセロテープが劣化して跡が残ってしまった。