「木を植える」の巻


まがりなりにも森林鉄道ですから木を植えないと様になりません。しかし、現地を視察したり、豊富な写真を見てみると、檜の産地・木曽と言えども、そこいらじゅう檜が植わっている訳ではありません。確かに伐採地の助六谷などの奥地まで行けば、前後左右それこそ檜だらけ(あるいは伐採されてしまった禿山だらけ)ですが、そこへ行くまでの行程は杉などの針葉樹やブナなどの広葉樹が茂っています。
 実は今回のモジュールで悩んだのがこの点でして、雰囲気で檜を採るか、それとも実際の再現性で広葉樹を採るか。結果的には前にも書きましたが「新緑萌ゆる季節の再現」を最大の目標としたかったので、檜よりも新緑の美しい後者を採りました。
 さて、皆さん、実際の木の高さってどれ位あるいと思いますか?森林組合の或る方に聞いてみたのですが、最盛期の木曽谷から切り出された檜の高さ(長さ)は大体25mだったそうです。これを87で割ると約28cm。LPジャケットを立てた位の高さになります。想像を遙かに超える高さなのではないでしょうか?僅か60cmのモジュールに30cmもの高さの木を植えた姿を想像すると、オバケのように感じるのではないでしょうか?ここが模型の難しさ。「いや、ボクは写実派だから30cmの木を植えるヨ」というのも良いでしょうが、模型の場合(特にこういったレイアウトの場合)は、「らしさ」が第一だと思います。パッと見た時に違和感が無いもの、ゲッと思わないものが良いのではないでしょうか?今回は広葉樹ですからなおさらです。
 先日の王滝村のイベントで頂いた資料(王滝村の森と自然)によると、木曽に茂る広葉樹にはミズナラやトチノキが多く、それらの高さは14〜18mほどだそうです。87で割ると18cm前後。それを頭に入れて作業を進めていきました。




使った素材はウッドランドの樹木セット(TR1103)。幹の高さは16〜18cm程度のものが7本セットになっています。ちょうど良い高さです。「木の幹は茶色」という先入観は捨てて、ライトグレーにバフを少し混ぜた色を幹と枝に塗って、これにフォーリッジの明緑色をまぶしてみました。



 


 

今回のモジュールの売りは「360度どこから見てもサマになる光景」でした。モジュール倶楽部の運転会に持って行って接合するのは第一の目的なのですが、それ以外にボクの場合は製品の撮影用お立ち台、という目的にも使います。その場合、撮影できる角度は多いに越したことはないからです。また、その見る角度によって「見せ場」が違っていた方が好都合です。そんなことから、橋脚も2種類にしましたし、向こう岸の表情も変えてみました。