キット組立講座


木曽の酒井製モーターカーV

「膨大な木曽シリーズ」の先鞭を務めたモーターカーが新設計のもと製造されました。スケールに忠実に再現することにより、ひとまわりスリムになったスタイルなど魅力あふれるこの製品の組みたてを、WEB上でお楽しみください。


第1回
1.側板に前後の妻板を半田付けします。各々の裾の部分で合わせててっぺんの部分はヤスリで仕上るようにします。出来上がってからパカッと半田が剥がれてしまわないように、しっかりと半田を流すようにして下さい。次にドアーと前面の窓枠を半田付けします。ドアーはヒンジの内側にはまり込むようにします。側板のドアーの上下方向の位置は、リブが側板のリブと揃うように、後部のドアーの位置は、後妻板の角穴の下辺とドアーの下辺が揃うようにします。
 


2.次に雨樋の半田付けです。まず側板の雨樋です。ドアーの上辺に引っ掛けるようにして位置出しをします。後部雨樋もドアーの上に乗るようにしますが、側面雨樋との接点は、若干ヤスッてピッタリと合うようにします。側面ドアーのテスリは2本のエッチング凸の間に入れるように、ドアーハンドルは側面ではハンドルが前を向くように、後部では中心を向くように半田付けします。ワイパーもこの段階で半田付けしておき、上まわりの半田付けが完了です。
 


第2回
1.ここからは下まわりの工作です。ギヤーフレームは角型スペーサーで箱型に組みますが、歪みがないようにすることが重要です。ここで歪んでしまうと、動きに直接影響しますので、何度もやり直す覚悟で落ち着いて作業しましょう。仮に動輪をセットしてみて、軽く廻ることを確認しておきましょう。廻らなければ(もしくはギヤーフレームに動輪がスッと入らなければ、歪んでいる証拠です。歪み無く組みたてられたら、床板に半田付けします。床板は若干反っていますので、あらかじめ指で平らに直しておきましょう。前後の向きには注意しましょう。床板でモーター穴がある方が、ギヤーフレームで軸穴から先端までの寸法が長い方(この写真で左側)になります。
 


2.床板の前後にはカプラーを、床板上面にはウエイト板を半田付けします。前者は横から見て床板と水平になるように、後者は床板の穴とピッタリ合うように留意します。


3.ここからは床板に細かい部品を半田付けしていきます。まず、軸受を床板のスリットに差し込んで半田付け。次にブレーキテコを同様に半田付けしますが、左右2個あるうちの片方は、テコをニッパーなどで撤去して軸だけにしておきます。この軸だけにした部品が進行方向左側にくるようにします。また、この部品は上下を間違わないようにして下さい。床板のスリットは中央部一番外側の穴です。最後にフレームを半田付けしますが、床板にあててみて角度を整えてから作業して下さい。半田付け自体は軸受部分とブレーキテコ部分だけでOKでしょう。最後にウェイトを1.4mmタッピングビスで止めます。前方のウェイトはセンターラインに揃うように、後方のは穴が後方にくるようにセットします。あたらじめウェイトの穴には、瞬間接着材を垂らしておくと良いでしょう。
 




第3回
1.さあ塗装です。5号はスカ線クリーム(マッハ模型17番)に白を1:1で混ぜたものを全体に塗ってから、マスキングして湘南グリーン(マッハ模型10番)を塗ります。20号は全体に旧2等貴賓車青帯(マッハ模型202番)もしくは伊豆急下半色ブルー(マッハ模型80番)を塗って、マスキングしてからスカ線クリームの原色と神戸市電上部色(マッハ模型132番)を塗ります。また、ラジエターグリルは銀色、床板から下は黒です。左の写真が最初の1色目を塗ったところです。マスキングは説明書の外観図をコピーして、その上に透明プラ板をセロテープで貼り、塗り分け線に従ってカッターで溝を入れていきます。そしてマスキングテープを貼って溝をガイドに切り抜いていきます。
 


2.一応塗装が完了した状態です。5号・20号ともに雨樋には赤を塗り、ラジエターグリル下部の凹部には黒を差しておきます。
 


3.正面の窓枠とワイパーの塗装を剥がし、ラジエターグリルやキャップを接着、ヘッドライトにもリムやレンズを接着します。窓枠には窓サンを接着(現物合わせで長さは調整します)、車体側面にはインレタを転写してから、クリアーラッカーでオーバーコートします。No.5のインレタは入っていますが、実車は番号表記がありませんでしたので、これは使いません(オマケです)。塗装が乾いたらレンズにプラ用塗料のクリアーを差しておきましょう。前のライトはともかく、後ろのライトレンズは小さいので、なくさないように注意して下さい。模型の何倍も拡大された写真では、チョット塗り分け部分がきついですネ(^-^*)。


 


4.塗り上がった下まわりにギヤーを組み込みます。3個並んだアイドラーギヤーは、似ていても歯数が違います。真ん中のギヤーは11枚、その両脇のギヤーは12枚です。見分け方は、真横から見て、歯の山が0時と6時の位置にあるのが12枚の方です。真ん中のギヤーは左右からシャフトをネジ込んで止めますが、その両側のはシャフトとEリングで止めます。動輪の軸箱が入る部分は、キサゲやカッターの刃などで塗装を剥がしておいて下さい。


5.集電ブラシのラグ部分を直角に折り曲げます。穴に少し掛かる感じで曲げても結構です。ここの写真のように半分に切ったコードを半田付けします。絶縁リングは写真のようにカッターで切り落としますが、穴には掛からないように注意して下さい。
 


6.モーターのラグ板のところに表記されている+側を右側(左の写真の向こう側)にセットして、1.4x2mm(小頭)ビスで床板に止めますが、仮に動輪を入れて噛み合わせを見てから、動輪を抜いて止めます。そしてもう一度動輪をセットしてから1.4x2mm(小頭)ビスで押さえ板を止めます。最後に写真のようにコードを床板の小穴に通してモーターに配線をします。
 


7.これで上まわりと1.4x4mmビスで止めて完成ですが、最後にDCC用デコーダーを積む場合を説明致しましょう。左側の集電シューは赤、右側が黒、モーターのラグ板は+側がオレンジ、−側がグレーです。このモデルはヘッドライトを装着できるように前面が準備されていますので、この組立見本では点灯可能にしてみました。
 使った電球は「フクシマ模型製1.5V球」です。他に430Ω抵抗を用意しました。2個の電球は直列に配線し、抵抗の茶色い帯の側に1本を配線、もう一方のコードは基盤の白い線の代わりに配線します。青いコードは抵抗のもう一方の側です。黄色いコードは使いませんので、根元からカットしておきます。抵抗は手元にあった数種類を試してみましたが、この程度の抵抗値が球切れする心配も無さそうでした。
 DCCを利用した任意の時に点灯可能なライトは、やはり魅力的です。DCCを使わずにライトを点灯させる場合には、12V用でしたらそのまま配線すればOKですが、それ以外の場合には御自分で試してみて下さい。
 さあ、これで完成です。飛び道具のように縦横自在に活躍するモーターカー。貴方のレイアウトでも活躍させてあげて下さい。
 














「くりしま牧場」こと栗島松雄さんに早速組んで頂きました。

「木曽モジュール倶楽部」でご活躍中の氏にテストショットをお渡ししてインプレッションを書いて頂きました。彼は同倶楽部でも緻密な工作派として一目置かれている技巧派。そんな栗島さんはこのモーターカーをどう見たのでしょうか?

写真をクリックして大きいサイズで御覧ください。



今回、全面新規でリニューアルされた木曽酒井モーターカーVを木曽シリーズファンの代表として一足先に組ませて頂きました栗島です。以下、私のインプレッションです。参考になれば幸いです。
 前作のモーターカーTは、私が始めてモデルワーゲンから購入し、初めて組み立てたキットでした(写真の青いヤツです)。現在の木曽モジュール倶楽部での活動へと繋がる第一歩になった車両です。マイクロレールバスのコンポーネントを最大限利用した"おかげ"で安定した走行性能を持ち、今でもデコーダーを搭載して運転会等で大活躍してくれている愛着ある車両です。
 全面リニューアルで生まれ変わった今回のモーターカーVは、果たして前作を全ての面で凌駕出来ているのか?そんな事を考えながら組み立てました。

組み立てに入る前に各部のチェックです。何といっても現存する保存車を採寸しスケールダウンされていますので『そうそう、このプロポーション!』と思わず頬が緩みます。各部品を見ていきますと、屋根が2重屋根になっています(上から見たことが無いので知りませんでした)。軸受けの形状も正確でしっかりとしたモールドが入っています。側面ドアにはリブがモールドされ、各ドアには『沼尻DC12』より採用されたドアハンドルが付きます。良いですね。小さな部品ですが良いアクセントになります。動輪径が小さくなった事により、車体の長方形がより強調されて『冷蔵庫』らしいシルエットです。ただし、動輪径が小さくなった事により線路面とのクリアランスに少し不安がよぎりました。



基本的な組み立ては、他のワーゲン製品以上に組み易く、慣れた(笑)方なら組説も要らない程です。いつもの癖でちょっと色気を出してみたくなり、車体下にぶら下げている『簡易転向器?』(正式な名称が解りません)と左前輪前に2連タイフォンを追加してみました。 『簡易転向器』この装置は木曽のモーターカーの標準装備品ですよね。実物の形状に拘らず(実際の所、形状が良く解りません。bTとbQ0でも良く見ると形状が違いますし…)アングル材を軸受け横に貼り付けるだけでも良いアクセントになると思います。ただし、組み立てた時にノーマルのギアー軸は入らなくなりますので、その辺の工夫と覚悟(笑)をして"どうしても付けたい方"は、工作してみて下さい(私は、転換器の半田付けを諦めギアー軸を挿入後、瞬間接着剤で固定しました)。

上回りの組み立ては、いつもと同様にボディーと前後妻板の継ぎ目を丁寧に消し、半田付けの際の余分な半田を良くキサゲして組み立ては終了です。一箇所最後まで悩んだのは、ドア窓に貼る手摺?です。前作は、穴にコノ字状の線材を挿して固定したのですが、今回は短い線材をエッチングされた所定の位置に貼り付けるようになっています。確かに今回の方が実感的なのですが、組み立てでは悩みました。半田付けして塗装後に塗料を剥がすか?ボンドで後付けか?前者は塗装を剥がす際他の塗装面を痛める可能性が有りますし、後者は強度面の不安が有ります。悩んだ挙句半田付けして塗装を剥がす方法を選びましたが、コレは組む方の好き好きですね。それと前面の窓ですが、裏からセルを貼る為の糊シロが殆ど有りません。前面自体がロスト部品なので、裏から貼るとかなり奥まってしまいます。手間を掛けてもプラ板をはめ込む方法をお勧めします。今回の塗装は、王滝営林署bQ0にしましたが、側面の雨樋の赤を入れると5色の塗り分けになり、思っていた以上に苦労をしました。



さて、とても興味が有った走行性能ですが、マシマ缶モーターの厚いトルクのおかげで非常に良く走ります。今回の動力は、ギアーの数が多いので噛み合わせの調整や、軸箱の回転、動輪の転がりにも注意し、もしスムーズに回らない場合は予め調整をしておく必要が有ります。指先で弾いて転がる位には最低でもしておきます(これはこの製品に限りませんが…)。その上でモーターの位置調整をじっくり行い、ベストの位置にモーターを置きます。
 動力部の調整は結構面倒なのですが、反面キットを組む醍醐味だと思います。現在の状態はアナログで運転していますが、動力が完全に馴染んだらデコーダーを積みDCC運転に移行する予定です。機関車にしたい程(笑)重量もたっぷり有り集電効率も良いようです。箱型の車体にはスペースの余裕が有るので更に補重するのも手ですが、このスペースを利用してライトを点灯させてみたいですね。
 先に触れた線路面とのクリアランスですが、見た目結構恐いのですが通常の走行には問題は無いようです。ただ、少し気になったので押さえ板の両端角を斜めに削っておきました。



蛇足ですが、今回のモニター工作は、全ての部品が揃った状態での工作ではなく、テストショット的な上がったばかりの部品を使いながらの工作でした。組み付けた後にエラーが判明し組み直した箇所も幾つか有りました。計らずも新製品を発売する上でのメーカーサイドの流れ・苦労を垣間見る事になりました。これからもより良い製品作りに期待をしています。
 一つ残念なのは前面のグリル部品です。前作はメッキされていましたが今回は真鍮生地のままです。"進化し続ける"木曽シリーズですが、退化しちゃいましたねぇ(笑)

最初に書きましたが、前作のモーターカーは、バラキット初挑戦の私にも組めた程組み易いキットでした。その旧作と比べても新作は更に組み易くなっていると思います。価格もリーズナブルなので「組んだ事ないから…」と言う方には入門キットとして最適だと思いました。あっ、でも既に完売かー!う〜ん…この辺り何とかならないでしょうか?せめて組立講座がアップされた後からでも注文出来るのが理想だと思うのですが…。ねぇ、森川さん。(はい。反省します。by もりこー)