キット組立講座

沼尻のサハ8〜10

当社が満身の力を込めてお贈りする新企画「シリーズ沼尻」。好評の「ガソ101」に続くセコンドバッターがこの製品です。これもガソと同様に人気車種だけあって過去、各社から製品化されましたが、当社は「木曽シリーズ」と同様に、現時点で当社が投入できる技術の総てを注ぎ込んだ「力作」になっています。サハ8〜10の微妙な違いも再現できるようになっていますので、部品をお選びのうえお好みの号車に仕立ててみて下さい。椅子や揺れる吊革など、遊び心も満載した客車。それがサハ8〜10です。

第1回
1.車体本体の組み立てから始めます。側板のドアー部分は非常に華奢ですから、曲げてしまわないように充分注意して下さい。この製品は「サハ8〜10」の微妙な違いを再現できるように側面窓枠が3枚入っています。その違いとはドアーの桟の有る無しです。表を参照しながら製作する番号を見定めて作業に掛かりましょう。一見同じに見える側板ですが、妻面窓下に小穴があるのが、ハンドブレーキが付く部分ですので、サハ8〜9にするには、このすぐそばのドアーには桟付きのドアーがきます。さて、側板の内側に窓枠を半田付けしますが、左右方向は窓柱がきっちりと合うようにして、上下方向は窓枠エッチングの上辺が側板の上辺と合うように留意します。こうするとドアーの下側には僅かな隙間が出来ると思いますが、これでOKです。この隙間にドアーステップの板が嵌まり込みますので、念のために確認しておくと良いでしょう。


2.次にウィンドウシルとヘッダー(窓上下のリベット付き帯)を半田付けします。あらかじめシルとヘッダーの裏側に半田メッキをしておくと作業がスムースに行くでしょう。側板へは長いシルとヘッダーを側面ドアー右部のところから始めて、コーナー部分で曲げて、妻面のドアーの所まで半田付けします。余った部分はカットしてヤスリで仕上ます。そして今度は妻面のシルとヘッダーです。その前に側板は2枚で微妙な違いがあることを確認して下さい。その違いとは、妻面の窓下に小さな穴が有るか無いかです。これに適合するように4本ある短いウィンドウシルとヘッダーのうち1本には、この小さな穴を避けるような欠き取りがあるのがお判りだと思います。と、ここまでが予習。さて半田付けです。それではこの小穴の部分から始めましょうか。まず側板にこのシルをあてがって、穴の位置を合わせます。そのまま持って、コーナー部分をギュッと曲げます(まだ半田付けはしませんヨ)。そして側面ドアー左部のところに何かで印をしておき、そこでカットします。そこまで出来てから半田付けをします。他の3本も同じようにしますが、小穴が無いので気軽です。最後に長いシルとヘッダーの時と同じように、妻面ドアーの所で余った部分をカットして仕上げます。


3.窓柱のエッチングで出っ張ったガイドを頼りに、ハンドレールを半田付けしますが、この線はエッチング両端に合うように、長さを調節して下さい。半田がボッテリと付かないように注意しましょう。次はドアー蹴込み部分の組み立てです。コの字型の部品に凸型をした部品を「ほぞ組み」で半田付けします。そしてこの凸型をした板が出っ張った部分が、先ほどのドアー下に入り込むように素早く半田付けします。さあ、これで側板は出来上がりです。


4.この側板を組み合わせて箱状にします。まず、妻面ドアーの上下部分をピッタリと突き合わせて、裏側をチョンと半田付けします。それからエッチングヌキパーツをこれに合わせて半田付けしますが、上下方向はヌキパーツの上と側板の上とが合うようにします。このヌキパーツも「サハ8〜10」に適合するように3枚用意されていますので、表を参照しながら使って下さい。サハ9の反ハンドブレーキ側ドアーだけに桟があります。
 


5.箱状になったところで、今度は車体アングルの取り付けです。まず写真のようにアングルの内側に床板が入るようにしながら、アングルに床板を1.4x2mmビスで止めます。つまり床板を治具代わりに使う訳です。この状態で側板に組み合わせて半田付けしますが、アングルの下側が車体の裾に合うように留意します。
 


6.ランプ掛けを半田付けして、裏側に出っ張った部分を仕上ます。妻面ドアー下には(側板が突き合わせられている部分の上に)渡り板を半田付けします。写真のように畳んだ状態も良いでしょうし、下ろした状態にするのも良いでしょう。妻面の「例の小穴」をガイドにΦ1mmの穴を開けます。旧塗装に仕上げる場合には、ここにハンドブレーキ軸を半田付けします(車体の内側に出っ張った部分はカットしないで下さい)。そしてこの下のブレーキテコも半田付けします。新塗装にする場合には、塗り分けの便を考えて半田付けしない方が良いでしょう。但し、この下のブレーキテコは半田付けをしておきましょう。旧塗装に仕上げる場合には、テスリ類もこの段階で半田付けして、裏側の出っ張った部分を仕上ておきます。屋根には「サハ9〜10」に適合するような弧を描いた水切りが表現されていますが、「サハ8」に仕上げるには、この水切りを丁寧にヤスリ、直線状のものを半田付けします。但しこの水切りは向かって右側が上がるようにして下さい。屋根の立ち上がり部分をヤスリで仕上ておきましょう。最後にベンチレーターを瞬間接着剤で裏側から接着して、上まわりは出来上がりです。
 


第2回
1.下まわりの工作です。まず、4個ある軸受に付いているブレーキシューを、片側づつ根元からカットして仕上ます。つまり、右側にブレーキシューが付いているものを2個、左側に付いているものを2個用意します。そして各々に軸受メタルを半田付けします。ブレーキテコ受を床板に半田付けしますが、注意することはふたつ。ブレーキテコ受の折り曲げ方ですが、左右の三角部分は凹んだ部分を谷折りに、中央の四角い部分は凹んだ部分を山折りにします。もうひとつの注意点は、床板の表裏を間違えないことです。写真とイラストをよく見て下さい。三角部分は弱いので、床板に半田付けする前に折り曲げたところに半田を流しておきましょう。ロスト製のブレーキテコの両端には凹んだ穴がありますが、ここはΦ0.4のドリルで少し掘っておきましょう。このままでも良いのですが、ここに線を差して半田付けをするので、少しでも掘っておくと保持性が向上します。湯口が付いた状態で作業をすると、やり易いでしょう。このブレーキテコを差しながら、ブレーキ軸をテコ受の三角の頂点の穴に差して半田付けします。ここで注意することは、ブレーキテコの向きと角度です。イラストを良く見て下さい。最後にブレーキテコの先ほどの穴にブレーキ引棒を半田付けして出来上がりです。
 


2.塗装に掛かります。ネジ穴があるような部品は、そこに竹串を差して作業すると良いでしょうが、そうでない小さな部品は、写真のように竹串の尖っていない方にカッターで割りを入れて保持すると良いでしょう。ハンドブレーキホイールは全体が見える訳ではないので、これでもOKです。


3.旧塗装に仕上る場合には、車体全体をダークグリーン(市販の近似色は、マッハ模型の「近鉄ダークグリーン」)に塗り、新塗装の2色塗りにする場合は、全体をクリーム色(スカ線クリーム)に塗ってから、窓部分(シル・ヘッダーを含む)をマスキングしてライトブルーに塗ります。見本では京浜東北線ブルーと京阪若草色とを3:2に混ぜてみました。ここでヒント。皆さん、クリーム色を最初に塗るときに、なかなか色が乗らないで、ついつい厚塗りをしてしまった経験はありませんか?このような経験をされた方は、最初にライトグレーを全体に塗ってから、クリームを塗るとサッと塗り上がります。急がば廻れという訳です。


4.屋根の色はチョット複雑なので説明が必要です(説明文の中で「説明が必要です」というのも変ですが・・・)。基本的には旧塗装の場合は黒に、新塗装の場合にはダークグレーに塗りますが、ここからが重要。サハ8〜9の「屋根の立ち上がり部分」は車体色なのですが、旧塗装の場合にはダークグリーン、新塗装の場合にはライトブルー、サハ10だけは何故か屋根の色に塗られています。ですから、サハ8〜9にするには一旦車体色を塗ってから、立ち上がり部分をマスキングして、最後に屋根色を塗ります。作例ではサハ9を旧塗装し、サハ8と10を新塗装に仕上げる予定ですので、写真は左からサハ8〜10の順で、左の写真は最初のライトブルー、ダークグリーン、ダークグレーに塗られていて、右の写真は2色目を塗ったところです。
 


5.ハンドブレーキ軸について。旧塗装に仕上げる場合は、車体に半田付けして車体と一緒に塗ってしまいますが、新塗装の場合は塗り分けを楽にするために単体で塗ります。まず全体をライトブルーに塗ってから、上のギヤーカバーの上部、段が付いている部分をクリーム色に、ブレーキテコの部分を黒く塗ります。テスリもクリームに塗ってから、塗り分けラインに合うような位置までライトブルーに塗ります。これらを車体にエポキシ系接着剤で接着します。テスリの車体内側に出た部分はカットしておいて下さい。側面窓のハンドレールをライトブルーに、渡り板を黒く塗ってから、別売の「アルプスモデル製インレタ」を貼っておきます。
 


6.屋根を車体にエポキシ系接着剤で接着してから、クリアーでオーバーコートします。結構雰囲気が出てきましたネ。写真左上がサハ8、右がサハ9、下がサハ10です。勿論、作例は作例ですから(?)各々新塗装や旧塗装に塗ってもOKです。
 



7.窓ガラスを塩ビ板などで切り出して貼ってから、ブレーキハンドルのある窓には窓ガラスの内側に保護枠を接着します。さらにハンドブレーキ軸にブレーキホイールを接着します。ブレーキホイールは旧塗装の場合はクリーム色に、新塗装の場合はライトグリーンに塗ってみました。どうですか?窓からチラリと見えるブレーキホイールはイイもんでしょ?
 


8.吊革は写真のようにハンガーと組み合わせて、ハンガーのCの字の部分を軽く潰して止めます。これを屋根板の平らになっている部分に接着します。椅子はエッチングヌキの窓枠の下側に突き当てるようにして接着します。椅子は紺色に塗ってモケットを表現してみました。ちゃんと吊革は揺れますか?これで上まわりは完成です。
 


9.床板には軸受を6本の1.4x2mmビスで軽く止めながら車輪を入れます。その時に写真のようにあらかじめ黒く塗っておいたブレーキシュー梁を、ブレーキシュー裏側の穴に差し込みながら組み付けます。梁の両端部分は、実際に組み付けてみて、長さを調整して下さい。軸受は床板からはみ出すと、上まわりを被せたときに支障がありますので、留意して下さい。カプラーは1.4x4mmビスで止めます。
 


10.上まわりとは1.4x2mmと4mmビスで止めます。最後にカプラーの小穴にピンを差してエポキシ系接着剤で軽く止めます。付属のカプラーリンクのうち、今回はCかBのリンクを使います。Dはダミー用でリンクがカプラーにぶる下がっている状態を再現するためのものです。実際に連結してみて、程よい硬さでクリッと連結出来ますか?ゆるいようでしたら、ピンセットなどで軽くリンクを狭めてやって下さい。さあ、これで出来上がりです。別売のアルプスモデル製サボを貼ったりすると、グッと感じが出ますネ。
 




 



左上:サハ8 右上:サハ9 下:サハ10

新塗装において、サハ10のみは屋根の立ち上がり部分が黒く、サハ9のみはドアー(側面と妻面の両方とも)の塗り分け線が直線です。
※サハ9の塗り分け線は昭和40年8月の時点までは他と同じように凸型でしたが、昭和43年4月の時点では直線になっていることが確認されています。